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Blue-G Corporation

ブルージーコーポレーション

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当店でも今一押しのルシアー、小林良輔氏。
まだ若いルシアーながら、そのデザインセンス、サウンドは実に目を見張るものがある。
彼のギターは一言で表すと「倍音豊かで鉄弦の響きが美しいギター」だ。
師匠の影響もあってか、クラシックギターとアコースティックギターの両方の長所を上手く取り込み素晴らしいギターを製作している。
今回は神奈川県相模原市にある彼の工房を訪ねて話を聞いてみた。
(取材日:2016.06.27)

まず、ギターに興味を持ったきっかけは?

元々小さいころからクラシックピアノを習っていたこともあって、楽器に触れることはとても自然なことでした。中学生の時に周りの影響でポピュラー音楽も聴き始めて、ポピュラー音楽の楽器と言えばギターだと思い演奏を始めました。

最初からアコースティックギターを選択されたのですか?

その時はエレキギターとアコースティックギター両方同時に始めました。最初に購入したギターはエレキギターのテレキャスタータイプです。

ギターを作ろうと思ったきっかけは?

もともとオリジナルのインスト曲を作っていました。
その時にこのフレーズはこういう音が出ればいいなと思うことが度々ありました。それは高音の伸びやかさだったり、プレーン弦の音がもっと太く出てほしいとかですね。しかし、そういうギターは値段もけっこうしますので(笑)
そしてそういう良い音が出るギターは他のギターと何が違うのか考えるようになって、初めて構造を意識するようになり、そのことがきっかけで製作に興味を持ちました。

製作の道にはどのように入りましたか?

22歳の時にアメリカのアリゾナ州にあるロバートベンに入学しました。

入学試験みたいなものはあるのですか?

英語で作文を書きました。
製作への情熱や、キャリアで目標とすることなどを書いた覚えがあります。

ロバートベンにはどのくらいの期間いましたか?

5ヶ月間いました。
その間にアコースティックギター、エレキギター、マンドリンを1本ずつ作りました。あとは簡単な修理も学びました。

その時の講師はどなただったのですか?

現在人気ルシアーのJason Kostalさんでした。
あとは非常勤でFrank Fordさんも学校に来て、ネックリセットやリフレットを学びました。

ロバートベンを卒業した後は?

ロバートベンを卒業した後は杉田健司先生の所に弟子入りしました。期間は3年間ですね。24歳から26歳までです。

その後はどうしたのですか?

そこからカナダのマスタールシアー、Sergei De Jongeさんの所で約2年間修行しました。

どのような経緯でサーゲーの弟子になったのですか?

サーゲーに自分から直接メールしてコンタクトを取りました。

多くのルシアーがいる中でなぜサーゲーを選択したのですか?

サーゲーさんはカスタマーからはもちろん、多くのルシアーから尊敬されていると聞いていたからです。そしてナイロン弦のこともしっかり学びたいと思っていたこともあり、サーゲーさんにコンタクトをとりました。

サーゲーの所での修行内容は?

最終セットアップはサーゲー本人がやりますが、セットアップ以外の所は全て担当しました。
直接関わったのはおおよそ30本くらいでしょうか。

サーゲーの所で印象に残っていることは?

ギターのことじゃないのですが・・・(笑)
食事にお肉がなかったのが衝撃的でした。基本は玄米と豆と野菜なんです。たまに魚はありましたけどね(笑)
けれど料理は本当に美味しくて、食事が毎回楽しみでした。

他にはなにかありますか?

これは杉田さんから教わったことなのですが、五感を大切にするということです。
ギター製作に主に使うのは視覚、聴覚、触覚ですが、味覚と嗅覚が鋭敏でなくなってしまうと視覚、聴覚、触覚にも狂いが生じてしまいます。
ある感覚が鈍ると、他の感覚にしわ寄せがくるということですね。
それと同じようなことをサーゲーも言っていて驚きました。やはり国は違っても同じ職人なのだなと思いました。

サーゲーのところに行ってギター製作で何が1番大切だと学びましたか?

とてもシンプルです。
ギター製作を楽しむということです。

日本ではいつから製作していますか?

2013年末か2014年の始めです。

この相模湖近くで製作したかったのですか?

いえ、色々と探してたまたま良い条件だったのがこの場所でした。
結果的に、この場所がとても気に入っています。

製作本数は?

年間10本から12本です。

材のストックはどのくらいありますか?

約50セットくらいでしょうか。
もう少しあるかも知れません。

どんなTOP材がありますか?

細かい音のオーダーにも応えたいので色々と揃えています。
シトカスプルース、イングルマンスプルース、ジャーマンスプルース、ウエスタンレッドシダー、アラスカンイエローシダー、イタリアンスプルース、カルパチアンスプルース、アディロンダックスプルース。
その中にベアクロー材もあります。

サイドバック材は?

インディアンローズウッド、マダガスカルローズウッド、アマゾンローズウッド、ホンジュラスローズウッド、ブラジリアンローズウッド、ブビンガ、サチャローズウッド、ボリビアンローズウッド、サントスローズウッド、ココボロ、タマリンド、グラナディロ、アフリカンブラックウッド、メキシカンロイヤルエボニー、ジリコーテ、ペアウッド、レッドガム、マンゴー、レパードウッド、サペリ、マホガニー、チェリーウッド。
その中に杢の出た材も多くあります。

ネック材は?

基本はアフリカンマホガニー、ホンジュラスマホガニー、スパニッシュシダーの3つです。

指板材は?

エボニー、スネークウッド、ブラジリアンローズウッド、アマゾンローズウッド、アフリカンブラックウッド、グラナディロ、ブビンガです。

色々な材をお持ちですが、小林さんの好きな材は?

うーん、いっぱいありますね。
フィギュアドグラナディロ、ココボロ、フィギュアドブビンガ、フィギュアドサペリ、ブラジリアンローズウッド、アフリカンブラックウッド、マダガスカルローズウッドでしょうか。

思っていた以上に好きな材がいっぱいあったので、ズバリ一つに絞って頂きましょう(笑)好きな材の組み合わせは?

これは困ったなぁ。
どの材もそれぞれ素晴らしい長所があるので、迷いますね。
敢えて挙げるならばジャーマンスプルースとブラジリアンローズウッド。
理由は色んなスタイルのギタリストに合うサウンドだと思うからです。

2016年6月27日現在のベースプライスは?

ベースプライスは38万円です。

ベースプライスのスペックは?

TOPはシトカスプルース、アラスカンイエローシダーです。
S/Bはインディアンローズウッド、アフリカンマホガニーです。
指板、ブリッジはエボニーになります。

アラスカンイエローシダーのトップをオススメされていますね?

はい。そうです。
もちろんアップチャージがあって良ければ他にも良い材はあります。
ベースプライスということで考えれば、アラスカンイエローシダーはとても良い材が多くて安定してます。
サウンドも良く、アディロンダックスプルースや良いシトカスプルースの低音の角が少し取れてまろやかな印象です。
名前はシダーですが、いわゆるウエスタンレッドシダーとは全く別の木です。
アラスカンイエローシダーはヒノキ科でシトカスプルースやアディロンダックスプルースと同じくらいか少し重いくらいの丈夫な材です。

ボディシェイプはなにがありますか?

D、OM、000、00があります。
その他に00サイズのクラシックギターがあります。
クロスオーバーも最近作り始めて、これはエレキやアコギも弾く方のためのナイロン弦ギターです。
持ち替えたときの違和感が少なく、ジャズなどにも良く合います。
他に要望があれば基本的にはどんなサイズでも製作します。

中々、ラインアップ以外のサイズでギターを作るのは大変ではないですか?

確かに大変な部分はありますけど、お客様のご要望には出来るだけ応えたいと思っています。
型枠代や特注のケース代などが別途でかかる場合があるので、お客様にはその分のご負担をお願いする事になりますが。

小林さんのギターの特長を教えてください。

製作時に心掛けているのは音のバランスが良く、自然にメロディが引き立ち、プレーン弦の音が太く、ハイポジションで音が伸びやかなギターを目指しています。そしてレスポンスの良さも意識しています。

尊敬するルシアーは?

サーゲーさんと杉田先生です。

その他に、素晴らしいギターを作っていると感じる人は?

Joshia De Jongeさんです。(ヨシアはサーゲーの長女。彼女は現在クラシックギター製作家として有名)
音も構造もデザインも、全てが素晴らしいです。

好きなギタリストは?

Jon Herington(ジョン・ヘリントン)さんと荻原亮さん。

最初に買ったCDは?

ミスターチルドレンさんの名もなき詩。

ギターを作っている時に気をつけていることはありますか?

当たり前ですが、手を抜かないこと。
ギター製作というのは細かい足し算だと思っています。
小さなことの積み重ねが最後の結果として出ると思います。
細かい作業でも手を抜かないことが大切です。

クラドニ理論というものを取り入れてると聞きましたが?

これはトップとバックを効率よく振動させる為に取り入れています。
Joshia De Jongeさんがやっているのを見てやり始めました。
クラシックギターの世界では多くの製作家が取り入れているようです。

今オーダー待ちはどのくらいですか?

約半年です。

塗装はラッカーですか?

いえ、製作するギターの塗装は全てフレンチポリッシュです。

なぜフレンチポリッシュなのですか?

扱いにくいけど、音が良いと思います。
木の鳴りを妨げることはなく、木本来の鳴り方をします。
ラッカーも良いのですが、僕のギターにはフレンチポリッシュがベストだと思います。

接着はニカワですか?

基本はニカワ接着ですが、その他の接着剤も使います。
慣れるとニカワが一番楽なのですが、ニカワ接着じゃないほうがいい箇所もあります。というのも、接着剤には再剥離性、耐熱性、耐水性、充填性etc…など非常に多くの要素があるので、部材によって使い分けることが大事だと思います。ちなみに細かい接着も含めるとギター1本を作るのに11種類の接着剤を使っています。

フレンチポリッシュやニカワ接着をする製作家が近年増えていますが、いかがですか?

近年増えているというのは過去のやり方が見直されているということだと思います。フレンチポリッシュもニカワ接着も伝統的な技術ですが、ハイエンドのクラシックギターでは今でもそれらがスタンダードなんです。現代の塗装や接着剤に比べると扱いづらさはありますが、音には最良だと認識されているからです。

今日は当店で販売している小林さんのギターを2本持って来ているのですが、制作者である小林さんにそれぞれのギターの特徴を教えていただきたいと思います。

まずこのドレッドノート( Ryosuke Kobayashi D cutaway (2015) )についてお願いします。

まず、サイドバックがマホガニーのドレッドノートを作りたいと思っていました。
サイドバックがローズウッド系のドレッドノートは低音がかなり出ますが、今回は敢えて違ったアプローチをしています。マホガニーのふくよかな中域にドレッドノート特有の低音が出れば良いギターになるのではないかと思い製作しました。
このギターにはマンザーウェッジが入っています。これによってボディの6弦側が少し薄く、1弦側が厚くなります。トータルの容積はドレッドノート同じです。ドレッドノートのサウンドはそのままで抱えやすくなりました。
このギターのサウンドはとても良いですね。
まず、反応が速い。ドレッドノートだけど全体のバランスが良いです。
必要充分な低音は出ていて、けれどもメロディはぼやけずしっかり出る。
また、見た目にも拘って製作しました。
全体的にオレンジっぽい色合いで仕上げました。
指板、ブリッジ材は軽くしたいからココボロを使いました。
サイドバックの材が軽いのでヘッド落ちしないように意識したのと、暖色系のカラーが欲しかったからです。

こちらのOM( Ryosuke Kobayashi OM cutaway (2015) )はいかがですか?

このギターは僕のギターらしいスタンダードな音です。
OMサイズなので非常に抱えやすい。
そしてフルスケールだけどそういう感じがしなく、弾きやすいです。
このギターは速いパッセージの曲などにも合う感じがします。
OM特有のバランスの良さがあります。
これはOMの良さを凝縮した1本です!

本日は貴重なお話、ありがとうございました。